このブログでは、SAP BW∕4HANAからSAP Datasphereに分析クエリをインポートし、インポートしたクエリの内容に基づいた分析モデルを構築する方法をご紹介します。
SAP BW∕4HANAからSAP Datasphereに分析クエリをインポートすると、既存データとメタデータを再利用することができ、それらのデータとメタデータをマニュアルで再構築することなくSAP Datasphereに追加することができます。
このインポート機能によって、SAP Datasphereにビジネスビルダとデータビルダでオブジェクトが生成されます。データアクセスはこれらのオブジェクトを通して実現され、リモートテーブルを通してSAP BW∕4HANAシステムから直接データを取得します。
生成された分析モデルはそのまま利用することもできますが、例えばディメンションタイプのビューに既存のマスタデータを結合するなどしてSAP Datasphereのデータを拡張することもできます。
これまで投資した既存の資産がSAP BW/4HANAにある場合、このインポート機能を利用することでSAP Datasphereでも引き続き利用することができます。また、リモートテーブルを通してデータを取得するため、既存のSAP BW∕4HANAの資産には影響を与えずにSAP Datasphereでモデルとして利用することができます。このため、基本的にはSAP BW∕4HANA側でのリグレッションテストは不要になります。
さらに、SAP BW∕4HANAのモデルとSAP Datasphereのモデルを結合することで、既存データと新しくSAP Datasphereに蓄積されるデータを統合することができ、SAP Analytics Cloudなどで分析に活用することができるようになります。
考えられるユースケースとして、SAP BW∕4HANAに複雑なクエリや多量のクエリが存在しており、これらのエンティティをSAP Datasphereでも引き続き利用したい場合に、このインポート機能は有効です。
また、インポートしたモデルに不足している項目がある場合、SAP Datasphereに存在するマスタデータと結合することでそれらの項目を補った新たなモデルを再構築することができます。既存レポートの刷新に併せて項目追加をしたい場合などに有効です。
さらに、SAP Datasphereと連携したSAPアプリケーションのデータや、周辺システムなどNon-SAPシステムのデータと、SAP BW∕4HANAのデータを統合したい場合にも有効です。SAP SuccessFactorsなどの人事情報データや、関連会社が利用するNon-SAPの周辺システムのデータ、個別の担当者が持っているExcelマクロで加工したcsvファイルのデータなどと、SAP BW∕4HANAのデータを統合したレポート要件がある場合などにも有効です。
前提条件として、SAP BW∕4HANAシステムで、SAP Datasphereへ転送する分析クエリをリリースしておく必要があります。詳細については、 SAP Datasphere で使用する分析クエリのリリースを参照してください。
また、SAP Datasphereで、SAP BW∕4HANAシステムに接続するために、SAP BW/4HANAモデルの転送タイプの接続を作成しておく必要があります。詳細は、SAP BW∕4HANA モデル転送接続を参照ください。
クエリをインポートするためのプロセスフローは以下の通りです。手順の詳細は、SAP BW/4HANA モデルのインポートを参照ください。
モデル転送後のメタデータマッピングは以下の通りです。
SAP BW/4HANA | SAP Datasphere | ||
---|---|---|---|
モデル | サブモデル | データビルダ | ビジネスビルダ |
インフォオブジェクト | マスタデータ | リモートテーブル | |
テキスト | リモートテーブル | ||
インフォオブジェクト | 接頭辞 DL のビュー | ディメンション | |
テキストインフォオブジェクト | 接頭辞 TA の追加ビュー | ||
複合プロバイダ | ファクト | リモートテーブル | |
インフォプロバイダ | 接頭辞 DL の (ディメンションビューへのアソシエーションがある) ビュー (ファクト) | (ディメンションへのアソシエーションがある) ファクト | |
クエリ | クエリ (制限キー数値、演算キー数値、フィルタ) | 分析モデル | 利用モデル |
クエリ (利用クエリの表示部分) | SAP Analytics Cloud のストーリーで利用できるパースペクティブ |
このように、SAP DatasphereとSAP BW/4HANAでモデル転送オプションを利用すると、ベースとなる SAP BW/4HANAクエリのすべての要素が、SAP Datasphereにデータビルダおよびビジネスビルダの一部として生成されることがわかります。
SAP BW/4HANAの情報にリモートでアクセスすることができ、SAP BW/4HANAのデータとアクセス可能な他の情報を組み合わせることができるようになるため、必要に応じてこの機能をご活用ください。