2023年10月末に一般出荷となったSAP Integration Suiteのオンプレミスアプリケーション間の連携機能、Edge Integration Cellについて概略を紹介します。これまでシステム間のインテグレーション基盤についてもクラウド化、iPaaS化を進め、より柔軟に低コストで継続的にインテグレーション環境を構築、運用できるように、BTP上のソリューションとしてSAP Integration Suiteを提供し、最新の統合テクノロジー基盤として継続的な機能強化を行っています。
一方で、個々のお客様によってはすべてのシステム、データをCloud上に置けない、移行できないという事情もあります。機密データ保護への法的要件や規制、顧客ごとの運用ポリシー、ネットワーク環境など様々な理由によって、すべてのデータがCloud上のシステムには乗らず、オンプレミスのシステム環境が残り続ける場合があります。こうしたオンプレミスのシステム間をインターネットとCloud環境を経由して連携することが最適な選択肢ではない場合も多く、そのためのソリューションとして従来からのオンプレミスの統合基盤であるSAP Process Orchestrationも継続提供してきました。
SAP Process Orchestrationによるオンプレミス間の連携
しかしProcess Orchestrationは2027年でメインストリームのメンテナンス終了を迎えます。またクラウド環境とオンプレミス環境で別々の連携基盤を利用することは、Integration SuiteとProcess Orchestrationの相互運用・連携性がサポートされていたとはいえ、変化対応を含む継続的な連携の構築・運用の負担を増大させます。
そのためクラウドとクラウド、クラウドとオンプレミス、オンプレミスとオンプレミスの連携を統合管理し、セキュリティ要件やProcess Orchestrationからの移行要件にも対応するために、プライベートなローカルのオンプレミス環境でIntegration Suiteの統合機能を利用できるEdge Integration Cellを一般出荷しました。
Edge Integration Cell
Edge Integration CellはKubernetesクラスタ上で動作し、現在(2023年11月)以下の環境をサポートしています。その他、最新の前提条件は3247839 – Prerequisites for installing SAP Integration Suite Edge Integration Cell に記載されています。
このEdge Integration Cellを利用することで、SAP Integration SuiteのCloud上の設計機能を通じてオンプレミスアプリケーション間のインテグレーションフローやデータ構造/バリューマッピング等をデザインし、その設定オブジェクトをCloud上ではなくローカル環境にデプロイして実行することができます。設定と監視をCloud上の統合基盤で集中的に行いながら、プライベートなローカル環境でシステム間の連携を完結させることで、上述のオンプレミスアプリケーションに対するセキュリティやネットワーク課題等に対応します。また Process Orchestrationからの移行先という役割も持ちます。
Edge Integration Cellの実行および運用コンポーネントには、インテグレーションフローやAPI連携を実行するWorker機能の他に、コンテンツのデプロイ等のライフサイクルを制御するコントローラー、APIの認証認可等のセキュリティや呼び出しのトラフィック制御等のポリシー管理、イベント連携のためのコントローラー等も含まれ、またFTP, HTTPS, IDoc, JMS, Mail, OData, SOAP等の主要なプロトコル用アダプタも提供されていることでローカル環境内でのシステム統合をCloud上の実行環境と同様に実現しています。
SAP Integration SuiteでEdge Integration Cellをインストールして運用するためには、エッジライフサイクル管理機能を使用してEdge Integration Cellの初期セットアップ、デプロイ、継続的なライフサイクル管理、 監視とロギング等を行います。詳細な設定手順は以下ブログやオンライン文書を参考にしてください。
Edge Integration Cell : Design, deploy and manage APIs | SAP Blogs
Setting Up and Managing Edge Integration Cell | SAP Help Portal