SAP S/4HANAのアップグレードに関する基本情報をご紹介するブログシリーズの前編になります。なお、本ブログの内容は2023年11月の技術情報に基づくものであり、将来変更となる可能性があります。
SAP S/4HANAのアップグレードの意義
SAP S/4HANAは2015年にリリースされて以来、毎年メジャーリリースアップを提供してきており、各リリースごとにFioriアプリやAIを活用したインテリジェント機能等、様々な機能が追加提供されています。また、インテリジェント・サステナブルエンタープライズの中核として、最新のSAP S/4HANAにアップグレードすることにより、CO2排出量測定等の新たな企業環境への適応やAI/機械学習等の新技術の活用が可能となります。本ブログは保守期限切れの対応のみならず、SAP S/4HANAを最大限活用するためにアップグレードを実施するにあたって正しいアップグレード手法を理解していただくことを目的としています。
SAP S/4HANAのリリース計画
SAP S/4HANA 2023以降のリリース方針およびメンテナンス方針は以下のリンク先をご覧ください。
3354958 – SAP S/4HANA Cloud, private edition and SAP S/4HANA on-premise – General Information on Support Packages Schedules
SAP S/4HANA(オンプレミスまたはプライベートクラウド)は、メジャーリリースとフィーチャーパッケージスタック(FPS)/サポートパッケージスタック(SPS)からなります。SAP S/4HANA のメジャーリリース後は、機能パッケージスタック (FPS)により機能追加と修正、 サポートパッケージスタック (SPS) により修正が提供されます。
正式な出荷実績及び予定は、PAM(Product Availability Matrix) およびSupport package stack maintenance scheduleにて随時更新されます。
テクニカルアップグレードとファンクショナルアップグレード
SAP S/4HANAをアップグレードするためのアプローチとして大きくテクニカルアップグレードとファンクショナルアップグレードの二つのアプローチがあります。
テクニカルアップグレード:バージョンアップに最低限必要な対応のみを行なうアプローチでより短期間・低コストで最新のSAP S/4HANAにアップグレードすることができます。
ファンクショナルアップグレード:テクニカルアップグレードに加えて、最新機能の有効化やSAP S/4HANA外で使用していたモジュールをSAP S/4HANA内に取り込むといった追加の作業を同時に行なうアプローチです。
ファンクショナルアップグレードで追加で活用する機能の例は以下の通りです。
ファンクショナルアップグレードはテクニカルアップグレードに比べて、長期間および高コストとなりますが、より大きなビジネス効果を得ることも可能です。また、テクニカルアップグレード後に最新リリースとなったSAP S/4HANAを活用して、継続的に改善を行なっていくというアプローチもあります。
アップグレードプロジェクトのアプローチ
SAP S/4HANAのアップグレードは確立された手順・ツールがあるのでプロジェクトの計画は立てやすいものとなります。ただし、以下の点に注意が必要です。
アップグレードプロジェクトのタスクとスケジュールのイメージは下記のようになります。
アップグレードプロジェクトの計画を立てるためには以下のリンク先を参照いただくことも有効です。
SAP ActivateにおけるSAP S/4HANAのアップグレードのRoadmap Viewer
Upgrading SAP S/4HANA – How, Why, and Best Practices
まとめ
SAP S/4HANAのアップグレード概要と二つのアプローチについてご説明しました。
合わせて、以下のブログもご覧ください。